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インターネットが私の世界

わたしが辛い時期に聴いていた音楽について

※この記事には多数のyoutubeの埋め込みが存在します 重たいです

 

生が辛い時期、というのは個人によって些かの差異はあれど、やはり「受験」というものに苦悶した人は多いのではないだろうか。かく言う私もその内の1人であった。

そんな中で、私の心の支えだった数あるもののうちの1つが、「音楽」であった。

とは言えど、世間一般的に支持を受けているような応援ソングや有名曲ではなく、90年代のアンビエンスを感じさせるようなテクノ・ドラムンベースにのめり込み、通学中や寝る前に欠かすことなく頭に流し込むことで、心の拠り所を作っていた。

そんな時期を共に乗り越えた私が思いを馳せる音楽をいくつか紹介したいと思う。

 

・Papua New Guinia/Future Sound of London

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初めて聴いた時の衝撃は凄まじかった。凍てつくようなピアノとブレイクビーツ、重なるサンプリングと圧倒的なアンビエンスによって作り出される独特の世界観に取り込まれ、外界のファクターを何もかも感じさせないような、LSD大麻でも接種したようなトリップへと連れて行ってくれる。この曲を聴いている間だけもはや世界がこの曲だけで存在してるような、無我の境地にたどり着いていた。そして、アウトロの最後の1音で完全に凍り付き、何が起こったかもわからぬまま停止する。正に「Future Sound」、そんな異様な世界観にすっかり虜になり、もはやドラッグと化していた。

 

・Your Love/The Prodigy

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Prodigyの中ではどちらかと言うとマイナーな曲だと客観的には思うが、これが私にとっての本格的なドラムンベースの出会いだった。激しいドラムの中に更に切り込むレイヴサウンドとどこか懐かしさを感じさせるような古臭いピアノの音色、全てが新鮮で、未曽有の体験だった。そして、中盤のブレイクで全てが止まり、なじるようにメランコリックなメロディが奏でられるとき、もはやトランス状態ともいえるコンセントレーションに浸る自分がいた。Prodigyの曲はどれも一癖二癖あり、それぞれが独特の雰囲気を持っているが、やはり自分の中ではこの曲は卓越している、ブッ飛んでいると言わざるを得ない。

 

・New Life/Fresh and Low

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正直、この曲は終始4つ打ちのリズムが奏でられるだけで非常に変化に乏しいものがある。非常にストイックなスタイルだが、開始1秒から現れる包むようなアンビエンスの中で徐々に訪れる非常に微細な変化を楽しむ、日本人の心に知らずと備わる「侘び寂び」の具現化ではないかと結論付いた。基本となるアンビエンスと4つ打ち、その他のスネア等はほぼ止まらず、やがて訪れる様々な音の追加、転調を今か今かと心待ちにするような高揚感を内包している。

 

・Two Full Moons & A Trout (Caspar Pound Mix)/Union Jack

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途方もないような世界観がこの12分に詰め込まれている。くどすぎない範疇でじらすように刻むように奏でられるピアノとスネアにより非常にゆっくりと1つ1つ異様な重みで刻まれていく展開の構成は、まるで超大規模な宗教の儀式、云わばメッカのようなとてつもない荘厳さと威厳を感じさせられる。そのピークは8分台で達し、そこで満を持してTwo Full Moons & A Trout(Casper Pound Mix)という教祖の実体を晒すような力強い威厳をひしひしと感じさせる。もはや、この楽曲自体が宗教である。

 

・Pacific State/808 State

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Two Full Moons(略 とは対極的に、こちらは悠久不変の自然のようなアンビエンスを感じさせられる曲である。水のように流れ続けるスネアとシンセに溶け込む動物の鳴き声とストリングスは、如何なる外力にも干渉されない優しくどこか本能的に安らぐ世界観を作り出している。「この」バーションのpacific stateでは途中幾度かロールバックのようなエフェクトがかかるが、それもまた趣があって心地よいものだと感じる。アウトロはあっけない幕切れだが、そこで曲の世界観から一気に解放されるような疑似的な脱トランス状態の作り方もまた憎いものである。

 

・Extra/Ken Ishii

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この記事の中の曲では2番目に知った曲ではあるが、今回紹介した中で全てのファクターを含んでいるような、そんな未曽有の魅力があった。イントロのわずかな時間の、まだこの曲には私が存在しないような世界観から一気に世界が変わり、激しくもどこか親しみを感じさせるような4つ打ちとシンセ、エレクトロニカのハーモニーに包まれる。展開にストーリー性も踏襲しており、4分台のブレイクで今までのメロディが一気にフェードし、ひたすら1つの音だけがリフレインされる技巧は衝撃的なものあり、一気にこの曲の持つ世界観に囚われてしまった。この曲のShort Ver.にはPVが存在しているが、どこかサイバーパンクの夜の街を駆け巡る、そんな雰囲気が存分に味わえる曲と言えるであろう。

 

この他にも、Halcyon on And on、Sweet Harmony、Strings of Life、Flaming Juneなど私の中で衝撃を与えた曲は夥しいほど存在するが、今回はテーマ通り、受験期から私の心の安らぎとして支えてくれた曲の紹介に留めた。この記事を執筆しながら当時の私の情景の想いを馳せていたが、やはり、これらの音楽が私に与えてくれた世界はすべてを忘れさせて、一体とならせてくれるような安らぎがあった、と言えよう。